
- 作者: 成毛眞
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2018/08/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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一点、非常に興味深かったのが、Amazonは会計士の先生や経営学の教科書が正解だと言いそうな「利益額」だの「利益率」ではなく、「売上」や「シェア」にこだわってビジネスを圧倒的に伸ばしているのだが、それは80年代の日本企業のやり方と同じではないか、という指摘である。確かに昔の日本企業は売上やシェアにこだわっていた点で、今のAmazonと通ずるところがある。その意味で、当時の売上重視・シェア重視の経営が日本企業の長期停滞を招いたとは言えず、著者の指摘は鋭いなと思った。しかしこの指摘だけを聞いて「やっぱり昔の日本企業はすごかったんだヒャッホー!」と80年代の日本企業を礼賛できる人は相当おめでたい頭に違いない。当時の日本企業の経営と今のAmazonの経営は同じではないことは、誰にでもわかることだからだ。そして何が違うのかと問われれば、やはり、本書でもページを割いて説明されている「キャッシュフロー経営」の有無だろう。何が成長や収益の源泉になっているかを見極め、そこにリソースを集中投下する。「選択と集中」と呼ばれる経営戦略の基本事項をAmazonは徹底的にやっており、当時の日本企業はできていなかった。Amazonは「競合を潰して傘下に収めるため」だけに数百億円もかけてサービスを立ち上げる一方、日本はふんわりと多角化経営を続け、バブルが弾けてもなお相当長い間、目を覚ますことはなかったのだ。