横山信弘『絶対達成する人は「言葉の戦闘力」にこだわる』

予材管理や超・行動、絶対達成といった方法論やキーワードでブレイクした営業コンサルタントによる新刊。

率直な感想を言えば、わたしには何も響かなかった。言葉をこねくり回しているだけのエッセイ本だ。

わたしがもう10年近く著者に期待しているのは一点だけ、『横山信弘の5枚のシートで営業目標を絶対達成』というムック本に「さわり」だけ書き、日経ビジネスオンラインで公開すると宣言していた「ターンオーバー戦略」の体系的・包括的・具体的な方法論である。

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上記の感想の「余談」として載せていた、ターンオーバー戦略の予告編を再度引用してみたい。

 例えば商品ライフサイクルが成熟期に入りつつある業界、ここにはまさにターンオーバー(ひっくり返し)戦略が当てはまる。こうした業界のプレーヤーは今まで追い風に吹かれ、さほど営業をせずとも、お客様から支持されてきた。したがって、売り上げはあるものの、総じて営業力が弱い。
 そこに営業力が強い新興企業、あるいは異業種の企業が参入してきたらどうなるか。オセロゲームで一気にコマをひっくり返すように、既存の企業は駆逐されていく。
 ターンオーバー戦略は、いわゆる「ブルーオーシャン戦略」の逆の発想と言っていい。競争が厳しいレッドオーシャンにあえて飛び込んでいくからだ。
 「シェアが固まっている我々の業界にわざわざ攻めてくる企業など、おらんでしょう」と思ったら大間違いだ。成熟した業界の慣習に慣れきって、あぐらをかき、たいして営業努力をせずに現状を維持している企業ほどこう考える。
 しっかりした営業力さえあれば、こうした業界の地図を塗り替えられる。顧客も市場を活性化する新たなプレーヤーを歓迎するだろう。
 企業戦略として、新しい商品を創造し、競争がまだない世界を切り開く道があることは承知している。だが、この戦略を成功させるためのハードルは極めて高い。
 営業強化も簡単ではないが、ヒットする新商品を創ることに比べれば、努力しだいで誰でもやれる。実際、私どものメソッドで多くの企業が「絶対達成」の習慣を身に付けつつある。
 「絶対達成」が習慣になった企業がこの先、これまで以上の成果を求めるのは当然だ。私はこれらの企業に「ターンオーバー戦略」を訴えていく。絶対達成が習慣化した企業が、新たな市場に切り込み、ターンオーバー戦略を実行、市場を活性化させていく。

2014年の記事を読み返して改めて思ったのだが、これは凄いことである。

よく、「営業は、魅力に乏しい商品でも売り切ってこそプロ」的なことを言われる。事実そうなのだろう。一方で、営業を何らかの形で経験したことのある人の半数以上の方は、一度はこう思うのではないだろうか。「俺は魅力に乏しい商品をセールストークで売りつけるのではなく、真に魅力的な商品を皆に売りたいんだよ!」と。でも、本当に魅力的で差別化された商材を扱えている企業はごく一部である。大抵は、代替可能で、どんぐりの背比べか、下手をすると競合よりも明らかに劣ったスペックしか持っていない商材で戦うしかない場合も多い。

ターンオーバー戦略とは「差別化できない商材をあえて扱い、営業力だけで競合他社をひっくり返していく」という、世の中にごまんとある「普通の会社」や「普通の会社に所属している営業マン」が待ち望んでいた戦略であり、戦術である――はずだ。

そのはずだが、ターンオーバー戦略のことを知って以来、未だにその詳細はよくわからない。

現時点で著者の方法論を最も体系的に記した本である『最強の経営を実現する「予材管理」のすべて』でも、サラッとしか書かれていない。

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本書については、書名の「戦闘力」というキーワードから、ターンオーバー戦略についてもう少し書かれているかなと思ったんだけどねえ。