
未来型国家エストニアの挑戦 電子政府がひらく世界 (NextPublishing)
- 作者: ラウルアリキヴィ,前田陽二
- 出版社/メーカー: インプレスR&D
- 発売日: 2016/01/29
- メディア: Kindle版
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エストニアにも当然「マイナンバー」および「マイナンバーカード」に相当するものはあり、エストニアではマイナンバーを「デジタルネーム」と呼称している。そしてエストニアでは、デジタルネームは特に隠すべきものとして扱われていない。ここが最も重要で、遅々としてデジタル化が進まない日本との成否を分けた最初の一歩ではないかと思った。これは序章だか第1章だかでさらっと述べられている程度だったが、これは非常に重要だ。日本ではマイナンバーが極めてアンタッチャブルなものとなっているが、これは矛盾というものだろう。
そもそもマイナンバーが知られたところで何が困るというのだろう?
マイナンバーカードには、顔写真がついており、住所や名前があり、マイナンバーがついている。免許証と同じではないか。免許証の番号を知られたら「何となく悪用されるのではないか」と思うが、実際の使い道は困難である。それと同様、マイナンバーカードにマイナンバーが付いているからと言って、マイナンバーが知られたからと言って即座に何かの悪用をされるわけではない。もし悪用されるのだとすれば、マイナンバーではなく、個人の認証方法に問題があるのだ。
もちろん、わざわざネットで公開してみんな見てくださいとする性質のものではない。免許証や保険証と同様、必要時には携帯し、必要のないコピーは断り、紛失しないようにする。それだけである。
わたしは1億3000万人の日本人にユニークなIDをつけるマイナンバーという考え方には大賛成だ。それどころか、紙幣を廃止して全て電子マネー化し、マイナンバーと個人の支出を紐付けるのも大歓迎だ。こうすることでブラックマネーやブラックマーケットは相当程度根絶されるし、税金をより適切に徴収できるため、基本的な税率を下げることができる。*1
こうして俯瞰すると、15年かかってもインターネット投票ひとつできない日本では、これから15年かかってもマイナンバーが適切に使われることはないだろう。こうやって日本はまたひとつガラパゴス化し、衰退するのだ。
*1:災害時に電気系が完全ダウンして自動販売機やコンビニを使えないと困るので、硬貨は残しても良いかなと思っている。そうなると足がつかないように変な取引は硬貨オンリーで行われる可能性が高まるが、カバンに硬貨をぎっしり詰め込んでいる奴がそもそも怪しいという見方もできる。なお、これはわたしが考えた突飛な案ではなく、既に数年前より幾つかの諸外国で検討されている案である。