今井むつみ『学びとは何か <探究人>になるために』

学びとは何か――〈探究人〉になるために (岩波新書)

学びとは何か――〈探究人〉になるために (岩波新書)

副題の「探究人」というキーワードが何となく気になったのと、個人的に「熟達」という考え方に凄く関心を持っているので、読んでみた次第。

個人的には、まず「スキーマ」という概念が気になった。スキーマとは知識や考え方の枠組みのようなものである。第二外国語の学習なんかでも出てくる概念で、要するにスキーマがないと、物事の理解には物凄く時間がかかる。一方、これは思い込みにも繋がるもので、スキーマ自体は常に修正・更新されていかねばならない。

また、熟達によって脳そのものが変わるという説明も興味深かった。自分の名前や住所まともに受け答えできないほど泥酔した人間が、それでも自分の家に帰ってくるのは、本書の言う「手続き記憶」は強固であることの証明であると思ったり。

全般的に、学術書なのか一般教養書なのか、アプローチが不鮮明な本だなと思う。新書であることを踏まえると、細かな研究内容の紹介は最小限にして、上に書いたような内容をもっとシンプルに説明してくれた方が、読者として有り難いのではないかと思った。