グロバリという英語学習サービスを運営している方の著書。
でもグロバリの話は全然なくて、一貫して「英語の正しい学習法」にフォーカスした本の内容になっているのは好感を持った。
本の内容としては、第二外国語習得論(SLA)の見地に立つと、これまで常識的または暗黙的に行われてきた英語の学習法には非効率なものや誤解されているものがあるという前提の下、英語の正しい学習法で勉強してみましょうというものだ。ただし一口にSLAの見地と言っても様々で、例えば先日読んだ中田達也+鈴木祐一『英語学習の科学』だと、単語帳も重要だし英文法の知識も英作文もリーディングもリスニングも全部重要で……と、一般常識的・総花的で(後述するが)本書とは少し異なる主張になっていた。
まあ著者は英語力を向上させるサービスを提供している方だから、総花的に「まああれもこれも重要ですよ」というよりは、ご自身の経験も踏まえつつ一部のSLA研究にフォーカスして、ポジションを取っているのだろう。その意味では、SLAの研究を100%正確に反映しているかどうかは知らないし興味もないが、個人的には、発見の多い本であり、読んで良かったかなーとは思った。
例えば、著者の文章そのものではなく自分の理解で書き下した文章となるが、
- 単語量を増やすよりは瞬発力のほうが大切である
- シャドーイングや英文暗唱など既に用意された英文を読むことはアウトプットではなくインプットに過ぎない
- (文法書を何冊もやるのは辛いのでわたしは網羅系の文法書を一冊だけ何周もやり込もうと思っていたのだが)日本語の解説を読む時間は英語のインプットなどではないのだから、薄い文法書を1冊復習したあとは実際に英語を使うほうが効率的に定着する
- 「英文を正しく理解する」の「正しく」が論点で、直訳よりは英語の言葉のイメージを掴むことのほうが長期的には有効
といったあたりを、自身の英語学習や指導の経験を元に語ってくれているあたりは、わたし自身の認知に大きな揺さぶりがかかり、大いなる刺激を受けた。