『トップポイント』2024年1月号

雑誌の紹介

毎月10冊の要約(新刊8冊・ロングセラー2冊)と6冊のプチ要約が載っている、ビジネス書の要約雑誌……と毎度機械的に書いているけれど、今月は8冊だな。今月だけなのか、変わったのかはよくわからない。

www.toppoint.jp

掲載された本の一覧

今月の10冊は以下:
宗教の起源
新しい封建制がやってくる―グローバル中流階級への警告
この一冊でわかる世界経済の新常識2024
BCGが読む経営の論点2024
「自営型」で働く時代――ジョブ型雇用はもう古い!
プロカウンセラーの聞く技術
人はどう老いるのか (講談社現代新書)
世界史の中のパレスチナ問題 (講談社現代新書)
イスラムがヨーロッパ世界を創造した~歴史に探る「共存の道」~ (光文社新書)
寛容についての手紙 (岩波文庫)

プチ要約の8冊は以下:
母、アンナ: ロシアの真実を暴いたジャーナリストの情熱と人生
マゼラン船団 世界一周500年目の真実: 大航海時代とアジア
徳望を磨くリーダーの実践訓
チームX(エックス) ―― ストーリーで学ぶ1年で業績を13倍にしたチームのつくり方
誠実な組織 信頼と推進力で満ちた場のつくり方
マイクロソフト「Copilot」の衝撃 生成AI時代のマーケティング
神・リピート集客術
プライシング 戦略×交渉術 実践・B2Bの値決め手法

本のピックアップ

本をピックアップする人、変わった? 昨年後半は興味深い本で満載だったのに、なんか先月・今月とピンと来ない。いや、変わってないんだろうな。単にわたしが、「面白い本があるな!」と思う月は気にならず、「何かピンと来ないな……」と思う月は気になっているだけなのだろう。でももう少し言語化する。

まず、宗教・歴史・地政学は、時々なら、かつ時勢と合っているなら良いんだが、毎月毎月しかもマイナーな論点を紹介されるのはちょっと……と思う。確かに最近地政学リスク、特に21世紀にもなって未だに領土的野心を隠そうともしない2つの覇権主義国家「ロシア」と「中国」がビジネスに与える負の影響は凄まじいものだ。ロシア・ウクライナ問題は言うに及ばず、中国の「内戦問題」と称したチベット・ウイグル・モンゴル・台湾への過干渉・弾圧も目を背けたくなる。また、1993年の「オスロ合意」に基づく暫定平和の裏側で文明間・宗教間の対立というマイナスクレジットが尋常じゃないほど積み上がっていたんだなぁと、まさに20世紀の負の遺産をこのタイミングで世界中が見せつけられているようなイスラエル・パレスチナ問題も同様だ。TOPPOINTが宗教・歴史・地政学の本を定期的に取り上げているのは、こうした世界事情を「経営者のビジネス感覚や教養の前提」として一定理解しておくべきというメッセージなんだろうなと一定好意的には捉えている。一方、ロシア・ウクライナ問題も、中国の自称内政問題も、イスラエル・ガザ問題も、膠着状態が続く中、どの識者や国家も大した実効性のある展望を示せていない。その中で(実効できていなくとも)考えるうえで凄く有益な本がどうのって話ならともかく、マゼラン世界一周500年とか、2ヶ月連続で宗教本を何冊も紹介するとか(ジョン・ロックの信仰に関する本を含む)、何かピントがズレているなと思う。

老いについても同様で、よく老いをテーマやモチーフにした本が紹介されている。しかしわたしに言わせると、経営者についても一般大衆についても、まずは「老い」について大幅なアップデートが必要だと思う。わたしが言いたいのは、外形的な「年齢」に基づいて判断するのは辞めるべきという話である。わたしは今、45歳だが、45歳ともなると何となく落ち着いて、60歳になると経営者以外は能力が変わっていないのに給与を下げられて、65歳になったら引退……という感覚自体がもう古い。それは年金問題に端を発した定年延長問題や長寿命化という話ではなく、人生60年時代から人生100年時代にシフトしている中で「60歳」の定義が大幅に変わっている点だ。もちろん60歳時点で性も根も尽き果てた人もいる。一方、60歳になっても気力と能力が全く衰えていない人も増えている。その背景にあるのは史上空前のトレーニングブームだ。わたしも45歳だが、体力的には全く衰えた感覚はない。いや、正確には性欲が減退したり眠りが浅くなったりと色々あるのだが、少なくとも仕事上は目がギラついていて、毎日毎週勉強して、手も足も頭も口も動かしていて、上手な手の抜き方も覚えて、筋トレで物理的な体力・筋力はさらに向上している。

あと組織論とマーケティング論が(これは従来からかもしれないが)社員数名から10名ぐらいの零細会社にフォーカスしたものを見かける。これ自体は別段悪い話ではないのだが、あくまでも「方針」や「戦略」ではなく「戦術」で、正直経営者向けとは言い難いと個人的には感じる。One-Point Reviewで時々載っている程度なら別に良いんだけどね。でもせいぜい1ヶ月か2ヶ月に1冊が限度だな。

もちろん、わたしが経営者じゃないからかもしれない。、しかし経営者がマゼラン世界一周500年だの、神道がどうだの、老いがどうだのといった本を「仕事」や「教養」のために読んでいるとしたら、ちょっと違うよな、もっと「今」をアップデートしてくれ、と正直に思う。

話が長くなったので元に戻す。あえて言うと、今月気になったのは何だろう……。

あえて言うと……Copilotに関する本かな。これが洗練されてきたら、ChatGPTを超える衝撃が本当に来るだろう。