久美沙織『新人賞の獲り方おしえます』

別に小説を書くつもりではなく、文章読本として読んだのだが、どうにも釈然としない箇所が幾つもあった。

まず。

無名もエエとこの作家が「新人賞の獲り方おしえます」と言ったところで、説得力が感じられない。確かに新人賞は受賞したみたいだけど、それ以外は獲ったことないみたいだし、そもそも一般的には無名だろう。まあファンタジーやコバルトの世界では有名なのかも知れないし、有名なら良いって話でもない。でも、現金なタイトルをつけておきながら本人が無名というのは、どうにも釈然としない。

そして。

プロの作家として求められる文章力や構成力が著者に備わっているようには思えない。文のねじれ、外国が舞台の話に日本の諺が出てくること、「カモシカのような足」といった俗っぽい慣用表現――そうしたことに著者はヒステリックに怒っている。もちろん下手な人が教えたって構わないとは思う。でもオマエら下手だと怒っている当人の文章に巧さを感じないのは、どうにも釈然としない。そもそも、いま俺が真似ている「接続詞だけで句点を打って改行する」という表現を頻繁に使っているけれど、何か意味や効果があるのだろうか? 今のところ自意識過剰の産物としか思えない。

小説ノウハウとしても文章読本としても、別の本を読んだ方が良いと思う。