赤川次郎『ふたり』

驚異の多作作家としてあまりにも有名な赤川次郎の代表作……などと偉そうに注釈をつけたは良いが、今まで赤川次郎を読んだことは一度もなかった。その発刊ペースから完成度の低い小説なんだろうなあと思い、今までは遠慮していたのだ。それが今回なぜ読む気になったかというと、何と俺が教えている塾の生徒に「赤川次郎の作品を98冊読んだ」という剛の者がいるからだ。今までは読みたいなどとも思わなかったけれど、中3の少女をここまでハマらせた赤川次郎ワールド、気になるじゃないか。

つーか98冊ってマジでスゴいよな。赤川次郎って小学生から読むものなんだろうか。中1の初めから読むとしても、今までの2年間ちょっとで98冊か。クラブや勉強や遊びでクソ忙しいはずの中学生が2年間で約100冊。かなりスゴい。

肝心の作品を読んで感じたことは「文章がかなり下手」だということ。句読点ちょっと打ちすぎでしょう! 好意的に「こういう文体なのだ」と捉えるには、あまりにも文章が練られてなさすぎると思う。また当初の予想通りではあるが、実にベタな小説だ。事故で亡くなった姉の精神が妹の心の中に存在していて、妹だけは姉と交信を図ることができるのだが、そんな中、家族や友達との間に様々な出来事が起こっていき、戸惑いながらも主人公は成長していく――といった感じのアウトラインで、ほぼ的は外していないと思う。ベッタベタですな。

ただ、そもそも赤川次郎の本は気軽に読むための本なのだろうから、これくらいで文体もストーリーも十分なんだと俺は解釈した。むしろ赤川次郎は、読者に「消費」されるエンターテイメントということに自覚的・戦略的なのだと思う。