柄谷行人+浅田彰+岡崎乾二郎+奥泉光+島田雅彦+スガ秀実+渡部直己『必読書150』

近畿大学文芸学部助教授の奥泉光という小説家が言い出しっぺとなり、近畿大学文芸部の同僚や近畿大学国際人文科学研究所のメンバーなどと協力して作ったのが本書のリストである。本書は、人文社会科学50冊・海外文学50冊・日本文学50冊に、参考テクスト70冊を加えた構成である。軽いコメントもつけられている。

本書は、教養主義を復活させようとしているのではなく、「現実」に立ち向かうために必要な教養をリストアップしたのだそうだ。ただ、以下で引用する序文にあるように、多分に教養主義的な側面が感じられると思う。

カントもマルクスもフロイトも読んでいないで、何ができるというのか。わかりきった話である。われわれはサルにもわかる本を出すようなことはしない。単に、このリストにある程度の本を読んでいないような者はサルである、というだけである。

実に評論家的かつエリート的な発想で嫌になるが、まあ俺からすれば別に教養主義的であろうがなかろうが、有益なリストであれば何でも構わないと思って買ったのだが、個人的にはほとんど価値を感じられなかった。わたしはカントもマルクスもフロイトもまともに読んでいないし、ごくわずか読んだものもほとんど内容を理解できなかった。しかし教養主義に堕して何の価値もないことをああでもないこうでもないと言っているよりは、ここに書かれている必読書を読む時間で別のことをやった方がよほど価値があるだろう。