
- 作者: 岡本裕一朗
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2016/09/19
- メディア: Kindle版
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でも、それは編集者の怠慢である。
預言しよう。
このアプローチは絶対に売れる。
一般の読者にはほとんど進化の見えない領域、手垢のついた領域ほど効果的だ。
例えば考古学はどうだろう。エジプトのピラミッドは凄いよね、王様凄かったね、という程度では誰も喜ばない。しかしピラミッドが実は奴隷が鞭を打たれながらヒーヒー言って作った建築物ではなく、そもそもピラミッドの建築は巨大な公共事業で、出勤簿や有給の概念があったと聞くと、ん、そうなのかと知的好奇心がくすぐられる。少なくともわたしはそうだったのだが、これはもう10年か20年も前に聞いた話である。今のピラミッド研究の最先端はどうなっているのだろう。そもそも考古学の潮流とは何なのか、そして最先端とは何なのか? わたしは凄く気になる。
もうひとつ、例えば美学はどうだろう。美とは何か、認識とは何かを探求するクソマニアックな学問だが、その最先端はどうなっているのか。美術批評でもいい。ピカソの次は、スーパーフラットな村上隆の次は、会田誠や奈良美智の次は一体何なんだろう。
他には……文学はどうだろう。最先端の文学批評とは果たしてどのようなものか? 筒井康隆『文学部唯野教授』から果たしてどの程度理論は進化したのか? 民俗学でも歴史学でも政治学でも良い、最先端の知の現場では一体何がテーマになっているのだろうか?
……というところで本書である。哲学は元「ザ・学問」「キング・オブ・学問」であったが、今となってはインテリの自己満足と化した学問と捉えられている。いや、わたし自身がそう思っているのだ。「カントぐらい読まなくては」「ヘーゲルぐらい」「デリダぐらい」「…ぐらい」と教養主義者たちは責め立てるが、全くその必要性を感じない。読んだからどうだと言うのだ。アクチュアルな魅力がないではないか……とわたしは思っていたのだが、本書を読んで得心した。カントやヘーゲルは哲学ではなく、哲学学なのだ。最先端の哲学は、アクチュアルな問題を取り扱っている。
本書曰く、世界の哲学者の問題意識は大きく6つにまとめられると言う。
- 哲学は現在、私たちに何を解明しているか?
- IT革命は、私たちに何をもたらすか?
- バイオテクノロジーは、私たちをどこに導くか?
- 資本主義制度に、私たちはどう向き合えばいいか?
- 宗教は、私たちの心や行動にどう影響を及ぼすか?
- 私たちを取り巻く環境は、どうなっているか?
どのテーマもアクチュアルだ。そしてSF的だ。一見すると到底これが哲学とは思えないのだが、本書を読むと哲学らしい切り口は確かに残っている。語り口は穏やかであるものの、極めて挑戦的な一冊である。
余談
わたしは以前、「フレームワーク本のブームの到来」を預言したことがある。この後、フレームワークに関して知りたいというニーズがどんどん増え、その流れに気づいた勝間自身もフレームワーク本を出したし、世の中にはフレームワーク本が溢れた。フレームワーク本のブームは明らかに勝間が源流である。
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