森博嗣『魔剣天翔』

魔剣天翔 Cockpit on Knife Edge (講談社文庫)

魔剣天翔 Cockpit on Knife Edge (講談社文庫)

元・旧家の令嬢にして離婚経験のある一児の母であり自称科学者でもある探偵役の瀬在丸紅子(とその友人である保呂草潤平・小鳥遊練無・香具山紫子)が遭遇・解決した事件を、探偵でもある保呂草潤平が回想として記述する「Vシリーズ」の第5弾。
本書では、事件の起こり方が「真っ当」である。保呂草は副業(?)としてイリーガルな仕事を持っているのだが、その副業関連で、各務亜樹良(かがみあきら)という人物に、ある「仕事」を依頼というか強要される。非常にリスキーなのだが、もう断ることができず、渋々ながらその案件の調査をしていたところ、殺人事件に巻き込まれるというものだ。
ミステリを読んだり観たりしていると、たまたま訪れたパーティーや温泉宿で事件に巻き込まれるというような陳腐な発端が多く、そんなことが人生にそう何度もあるわけないだろう……と毎回イラッとするので、こういう起こるべくして起こった真っ当な殺人事件(というものがもしあればね!)はミステリ素人の俺を安心させてくれる。