菅浩江『誰に見しょとて』

誰に見しょとて (Jコレクション)

誰に見しょとて (Jコレクション)

『永遠の森 博物館惑星』を読んで以来、菅浩江の本は10冊近く読んできた。そのどれもが多かれ少なかれそこそこ面白かったのだが、やっと『永遠の森 博物館惑星』に匹敵する面白さに出会えた気がする(それでもなお『永遠の森 博物館惑星』の方が一枚上手だが、これは10年とか20年に1冊レベルの大傑作なので仕方ない)。incubator.hatenablog.com
本作(連作集)の舞台は近未来。化粧やアンチエイジングなど、美にまつわる幾つかのSF的ギミックが現実化し、生や美の在り方が変わってきたのだが、そうなると当然、人々の意識も変わってくる。その変化が、しっかりとした手触りのある描写で表現されている。菅浩江らしくSFなんだけどハード過ぎず、叙情性もあり、かなり気に入った。

余談1

本書が気に入った方には、坂井恵理の『ビューティフルピープル・パーフェクトワールド』と『ビューティフルピープル・パーフェクトワールド2』を薦めたい。どちらも、美容整形技術が極端に発達した近未来を舞台としたSF漫画である。

ビューティフルピープル・パーフェクトワールド (IKKI COMIX)

ビューティフルピープル・パーフェクトワールド (IKKI COMIX)

ビューティフルピープル・パーフェクトワールド 2 (IKKI COMIX)

ビューティフルピープル・パーフェクトワールド 2 (IKKI COMIX)

余談2

信じられないことに、発売後2年近く経っているのに、Amazonのレビューが1件しかない。試しに大小10店ほどのリアル書店で確認したが、本書はあまり置かれていない。今時、誰もSFなんて読まないのかな。でもそもそも最近はSF、ミステリ、ライトノベルなどのジャンルはかなりクロスオーバーしており、ハードSFではない本書をSFという枠に閉じ込めておく意味があるのだろうか。ジャンル論議は犬にでも食わせて、本屋や出版社は本書を一般の小説の棚に並べ、幅広い層が本書を手に取るための努力をした方が良いのではないだろうかと強く思う。本が売れないと嘆く前に、やることはある。