- 作者: 山本さほ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2017/03/10
- メディア: Kindle版
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この手の毒にも薬にもならない漫画というのは、意外に貴重で、たまに読むと凄く癒される。
この手の毒にも薬にもならない漫画というのは、意外に貴重で、たまに読むと凄く癒される。
書籍版では色々と加筆されたり対談などの追加コンテンツもあったりするようなのだが、一旦Kindle版を購入。1話2ページの掌編が多く、やや物足りない気もするが、巧い。
今は『AIの遺電子』という作品を連載しているようなのだが、こちらも気になってポチッてしまった。
時系列シャッフル、藤子・F・不二雄へのオマージュ、SFやミステリへのオマージュなどなど、実験的な要素を幾つも孕んでいつつも、読者に楽しんでもらう作品が良い作品だ(そして描き手も楽しんでいるとなお良い)ということがストレートに伝わってくる、超名作だった。最終巻だけで既に何十回と読み返したが、書きたいことがありすぎて、逆に書けないという矛盾。
今はとにかく、早く作者の続編が読みたい。
[まとめ買い] それでも町は廻っている(ヤングキングコミックス)
それでも町は廻っている 公式ガイドブック廻覧板 (ヤングキングコミックス)
ダンジョン飯 4巻<ダンジョン飯> (HARTA COMIX)
それなら、ファンタジーにリアルを求めたら、やはり面白くなるのではないか?
それを世に知らしめた作品が本作である。
直接的な影響があるかどうかは不明だが、明らかに同種の系譜にあるものとして、先日も紹介したグレゴリウス『竜と勇者と配達人』や、西義之『ライカンスロープ冒険保険』がある。これらは明らかに、めっちゃ面白い!
incubator.hatenablog.com
ライカンスロープ冒険保険 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
竜と勇者と配達人 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
めっちゃ面白い!
最近「なろう系」という、異世界ファンタジーものが流行っていると聞く。21世紀の現代社会から突然、剣と魔法のファンタジー世界に飛ばされ、しかしそんなことどうでも良いということで説明も設定もアッサリと割愛され、でも転送された主人公たちは(普通なら剣と魔法のファンタジー世界の住人の方が体力的にもスキル的にも明らかに現代社会の人間よりも高スペックなはずなのに)ファンタジー世界でいきなり無双する、それを楽しむ、というジャンルである。要は、リアリティも必然性も要らないから、ただただ自分が異世界に飛ばされて活躍できたらという妄想を叶えてくれる物語を提供する、それが「なろう系」なのである。*1
本作はそうした作品の真逆にあるアプローチと言って良い。
本作の根底にあるのは、勇者だの僧侶だのと言っても、勇者は「職業」なのだ、という厳然たる事実である。すなわち彼らは、生きる糧として働いている。勇者としてモンスターを討伐する行為、それはサービス提供活動であり、経済活動なのだ。
だから勇者の行く手にはモンスターがいるが、勇者の通った後にはまるで参勤交代のごとく多くの人々が群れをなしてついてくる。パーティー御一行の武器を持ち運ぶ人、パーティーの経験値を記録する人、後方部隊の食事を作って提供する人、その食事のための食材を持ち運び提供する人……中には戦闘に勝った後(あるいは負けた後)に鳴らされるファンファーレ係なんていうのもある。そして勇者がドラゴンを倒した後がまた凄い。ドラゴンの牙・角・鱗・涎などがすぐさま競りにかけられ、日持ちしない肉を解体して持ち運ぶための部隊が街から派遣される。そして主人公はタイトルにある通り、配達人である。勇者のパーティー御一行と一緒に従軍していたが、勇者がドラゴンを倒した事実、すなわち「ドラゴンの死体」という「金塊」があることを知らせる手紙を各所に配達するのである。*2
勇者は世界を救うだけではない。後についてきた人々の懐を潤わせる存在なのだ。
もちろんそうした後方部隊も命がけである。何しろ勇者や戦士と違って、ただの経験値記録官や荷物持ちは、ドラゴンどころかその辺のモンスターにすら勝てないだろう。勇者や戦士が全滅したら、彼らはおそらく生きて街まで帰ることはできまい。しかし彼らは、勇者や戦士の経験値を記録するのが仕事であり、荷物を運ぶことが仕事である。彼らは彼らの戦場を戦っているのである。だから非戦闘職業の人々も、勇者や戦士が戦う間近で彼らを見守り、決して逃げることはない。
何たるリアリティ!
そして何たる夢と希望! この夢と希望は決してバラ色ではなく、手垢にまみれた金色の浪漫なのだ。
これは続きも必読だね。
先日、丸の内オアゾの丸善で『中世実在職業解説本 十三世紀のハローワーク』という本が平積みされており、直感的に凄く気になっていたのだが、その作者は本作と同じグレゴリウス山田であることが判明。んー、十三世紀のハローワークはKindleなしかー。紙の本はかさばるからKindleで買いたいんだが、大版なので紙の方が読みやすいかも。Kindle化されるのを待たずに今すぐ買うべきか迷う。
こうやって見たことも聞いたこともない本を衝動買いしていくのだなー。
素晴らしい。
閑話休題。本作は、最近もう購読を止めてしまったアフタヌーン系の作家だそうで、実にアフタヌーンらしい、ガロほどではない「ほどほどに」シュールでディープな作品集である。まあまあ面白いかな。
着想は面白いんだが、正直ガチャガチャし過ぎて、習作のような気もする。しかしこういう若書きは文字通り若手の頃でないと描けないので、その意味では貴重だとも思ったり。
この人は、正直まだ短編作家という感じなんだよなー。でもお話作りも絵柄も良いような気がするので、ちょっと長い作品を腰を据えて描くようにしたら、能力的にも人気的にも一気にブレイクするような気がする。
ワールドトリガー 18 (ジャンプコミックスDIGITAL)
元々首があまり良くないのにジャンプの編集部が無理をさせて悪化したという話も聞くので、本当に体調の問題ならしっかり休んでほしいというのもある。しかし(信じたくないが)仮に冨樫義博系の「ビョーキ」だとしたら、それはもう大好きなワールドトリガーであっても容赦なく終了させてほしいと思ったり。
でも個人的には、4巻はちょっと勢いが減ってきたかなー。
このままダラッと進むのなら、購入は控えても良いかもしれない。
タイトル名からは想像もつかないが、本作はダーツ漫画である。賭けダーツという裏の世界の遊びがあるという設定で、多くの人の賭けの対象になって物凄いプレッシャーを感じながら、「負けたら終わり」の命がけのダーツをプレイする、というのが大きなストーリーだろうか。なお本作の登場人物は、何もなければ基本的にダーツで満点を取るスキルがある。つまり普通に戦っても差はつかない。だから対戦相手はあの手この手で相手を揺さぶるし、選手に揺さぶりをかけるようなルールが付加されることもある。そのトリッキーさ加減と、心理描写の妙で、読者を惹き付けていくということだろう。
なお本作は、兄妹が描いた(という設定の)BL漫画を毎回カラーで載せるという、無駄に豪華な企画の漫画でもある。しかも絵柄は(当然)ゆうきまさみなのだが、着色は別の漫画家がやっている。それで、ゆうきまさみが描いていながら、どことなく別人の趣を出そうという……いや、やっぱり豪華だね。数々のヒット作を生み出してきたゆうきまさみじゃないとやれない「お遊び」かも。
ゴブリンスレイヤー 2巻 (デジタル版ビッグガンガンコミックス)
1巻も2巻も結局はそれだね。けっこう凄惨な描写が多いが、それが気にならない人には面白い作品だと思う。
田中圭一の「ペンと箸」: -漫画家の好物- (ビッグコミックススペシャル)
この人の「文体模写」ならぬ「絵柄模写」の魅力はたっぷり出ている。
しかし今度のライバルは違う。ハードな喘息持ちで、闘志を全く見せることなく、人生は引き算だ、大事なものはひとつあれば良い……と語るライバル。しかしその笑顔の裏側には、恐ろしい夜叉が棲んでいそうで……。
第二部になり、さあどうなるかと正直不安だったのだが、また面白くなってきた!