阿刀田高『あなたの知らないガリバー旅行記』

ギリシャ神話や聖書に比べたら原典の素材的な面白みには欠けるが、入門書の方はしっかりと高水準の読み物に仕上げていて、とても楽しい。ガリバー旅行記で有名なのは小人の国での話だが、実はガリバーは4回も航海に出ている。小人の国に行くのは1回目で、巨人の国、空飛ぶ島、馬と人間が逆転した島、と冒険を続けていく。ちなみに空飛ぶ島は「ラピュータ」と言う。憶測だが、「天空の城ラピュタ」はここから来ているんだろう。

本書を読むと『ガリバー旅行記』の作者のスウィフトは一筋縄ではイカないことがわかる。実は『ガリバー旅行記』はワクワクする冒険ファンタジーなどではなく、当時のイギリス社会への風刺に満ちた物語だし、作者のスウィフトは何と「スカトロジスト」なんだそうだ。糞尿の描写が極度に多く、しかも汚い話になると筆致が冴えまくるそうで。厭世家にして風刺マニア、そして強度のスカトロジスト。いやはや、とりあえず友達にはなりたくない人物だ。