鷲田小彌太『哲学がわかる事典』

哲学の入門書というよりは、鷲田小彌太が書くように、「哲学で、人間と人間関係の、極大から極小までを、森羅万象を渡り歩いてみようというもの」である。「哲学」ではなく「哲学的」な思考を鍛える本だが、より正確に言えば、「“鷲田小彌太が”哲学をベースにものごとを考えたら、こんな感じになったよ」的な本かな。ごく軽く哲学史を最初に学んだあと、政治から経済から戦争からセックスから酒から社会主義から愛から仕事からアレからナニまで、実に幅広く、鷲田小彌太流哲学でものごとを考えていく。でも、堅苦しかったり重苦しかったり難癖をつけまわしたりするわけじゃない。あくまでも平易な表現で、ゆっくりとゆったりと思索を重ねていくのである。分量は多いが、大学生以上なら時間を取れば誰でも読破できるだろう。普通の高校生でも興味があれば必ず読み切れると思う。俺としては高校卒業までに読んでいたかったという感じではある。

「これくらいの知識は大学生なら持っとかなきゃダメだし、これくらいの思索もやっとかなきゃダメだろう」といった感じのことをどこかで見かけた気がするけれど、俺もそう思う。現代人なら必読だ。重苦しいばかりが哲学や思想じゃない。本書は、哲学は意外にも軽やかで、思いのほか魅力的なんだということを教えてくれるし、哲学や哲学的な思考は日常的なものなんだいうことを実感させてくれる。