阿刀田高『アイデアを捜せ』

俺は阿刀田高を「上質のエッセイ書き」として認識しているが、本職はエッセイストではなくミステリー作家であるらしい。特に短編の評価が高いようだ。そんな阿刀田高が、ストーリーの作り方やモチーフの決定やトリックの探し方といったテーマに沿って阿刀田流の短編集の作り方を述べたのが本書である。といっても「〜講座」といった趣ではなく、あくまでも気楽なエッセイである。なるほど、ミステリーや推理小説といったジャンルはこんな風に作られているのかと思わせる点では非常に面白いし、ミステリー作家になりたい人などは参考になるのかもしれない。それにしても阿刀田高は良い意味でソツがないというか、買うエッセイが全て平均以上に面白くて、もう7・8冊は買っていると思うのだけれど、「買って損した!」といった不満を覚えたことが一度もない。小説は読んだことがないけれど、小説の方もおそらく(良い意味で)ソツなくこなしているのだろうなあと思う。