藤原和博+宮台真司『人生の教科書[よのなか]』

「よのなか」とは「世の中」のことである。

本書は中学高校向けの全く新しい「社会科の教科書」として書き起こされたらしい。知識の網羅性が低すぎるので学校で採用するのは100%無理だと思うけれど、確かにこれくらい読み物として面白い教科書であれば、現行の暗記偏重の社会の授業に風穴を開けることも可能かもしれない。

題材はわりとユニークで、接待から大人社会を浮かび上がらせ、マクドナルドのハンバーガーから世界を見つめ、コンドームから環境問題を考え、シムシティ(ゲーム名)から日本を考えていく。さらに「マイケル・ジョーダンの年俸」と「バタフライナイフ」の関係や制服の問題を考察し、最後は日本で最も有名な社会学者である宮台真司の文章で締める。かなり素晴らしい構成ではないだろうか。ちなみにテリー伊藤がコラムを書いているのはご愛敬。読売巨人軍の話は全くなかったので、ムカつきませんでした。

ほとんど全て面白いのだけれど、特に「制服に征服された高校生」というコラムと宮台真司の「意味なき時代をどう生きるか?」という文章は良い。下品な言葉づかいで毎回同じことを言ってるだけのようにすら思える宮台真司だが、今回の宮台の文章はぜひ中高生に(もちろん中高生以外にも)読ませたい。色々なことを考えさせられるのではないだろうか。