永井均『「こども」のための哲学』

永井均にとって重要な問題である「ぼくはなぜ存在するのか」「悪いことをしてはなぜいけないか」という2つの問題を、哲学用語で考えた気分になるのではなく、自分の言葉で徹底的に考え抜く本である……のだが、う〜ん、なんだか全然ピンと来ない。特に1つ目の「ぼくはなぜ存在するのか」という問いに対しての考察なんか、その問い(というか問題意識)は痛いほど理解できるのだが、永井均の考えや出した結論にはあまり納得できない。

ただ、こういった俺の不満に対しても、永井均は本書の中で解答を与えている。本書は「――主義」といった既に出来上がった「思想」を教えているのではなく、「自分の言葉で哲学する(考える)ための方法」を示しているのだそうだ。もちろんみんなが永井均と同じ疑問に引っかかるとは限らないのだから、永井均と同じ疑問を考え抜く必要も全くないし、永井均の結論や思考過程に共感する必要も全くない。つまり、読者は<ぼく>にとって避けて通れない大事な問題を自分の言葉で考え抜いていけば良いのだ。

そう考えると、確かに本書は<ぼく>自身の内面から沸き起こる疑問を<ぼく>自身の言葉で徹底的に考え抜こうとしているし、現に考え抜いている。本書は「哲学入門書」ではあるが、一般的な「哲学的思想を羅列する哲学入門書」ではなく、永井均の考え抜く姿勢を学ぶ――見習うための本なのである。知識を得ることは出来ないが、そう割り切って考えるとかなりオススメだと思う。

考え抜くことは大変ではあるが、考え抜かない限り、簡単に答えを得ることは出来ない。