著者は、現在あるような、純粋な資本主義としての「情報化/消費化社会」を必然の帰結だと感じているし、それなりの魅力を持っているとも思っている。しかし今の「情報化/消費化社会」には制度ゆえの幾つもの限界問題を孕んでいて、それらの限界問題を乗り越えるには「情報」「消費」の概念を捉え直し、転回せねばならないと考えている――わずか数行で説明するのだから相当の語弊があるのは承知の上だが、ごくごく簡単に内容を説明すれば、以上のようなアウトラインで、まあ大きくは外していないだろう。
詳しい本書の論評はインキュベ日記の性格を逸脱してしまうので止めておこう。少しだけ書くならば、個人的には、現状を肯定して安心するのは最も恥ずべき堕落の形態だと思っているので、より良い世界を構想しようと意図する著者の姿勢は嫌いではない。ただ、どうも本書は現在の世界から見える「希望」を語っているのではなくて、どこにもないユートピアとしての「理想」を語っているように俺には思えるのだ。
まあ俺は、本書は多くの欠点や論理矛盾があると思っているし、実際とある大学との合同ゼミで本書をテーマにした時は、俺らの大学は片っ端から本書を粉砕していった。しかし、それだけ丁寧に読んだこともあり、愛着があるのも事実ではある。社会学を志向する人は、本書を精読する価値があると思う。勉強になった本。