一昨日、『インドの大道商人』を読み返して感動しまくったので、本屋で山田和の本を探し回って見つけた1冊。本書は著者がインドを初めて訪れた頃の話を中心に綴っている。さすがに『インドの大道商人』ほどの凄まじさは感じられないが、本書も非常に面白い。
いわゆる「旅本」作家の多くは、異国での人とのふれあいを重視するあまり、ツアー感覚の旅行をけなしたり、良いホテルに泊まることを嫌悪したりする。彼らは進んで汚らしい格好をして汚らしい宿に泊まり、それで異国の一員になったと錯覚するのだ。とても愚かな精神だと思うし、明らかな視野狭窄である。旅のスタイルや旅から得られるモノは人それぞれであり、様々な選択肢や可能性がある。ツアー旅行からとても貴重なものを得られることだってあるかもしれないのに。バックパッカー気取り、貧乏旅行者気取り、自分探し気取りを嫌っているプロ旅行者も当然いるだろうが、バックパッカー気取りの薄っぺらい倫理が垣間見えて、ウンザリする「旅本」は数多い。
けれど山田和には、そのような偏屈なところは(少なくとも本書と『インドの大道商人』<においては)皆無である。山田和は貧乏旅行に全然こだわっていない。伸びやかで、自由で、おおらかで、自然だ。そこが、山田和の文章がバックパッカー気取りの文章と決定的に趣を異にする要素であり、俺が惹かれる理由である。いずれ山田和の他の本も探して読んでみようかな。