奥田英朗『延長戦に入りました』

広く分類すれば「スポーツエッセイ」ということになるだろうが、決して真面目な本ではない。ボブスレー選手の葛藤について思いを巡らせ、走り高跳びの背面跳びは「ミもフタもない」とベリーロールの復権を唱え、レスリングのタイツはなぜ乳首を中途半端に出すのかと物議を醸し、さらには、がに股と女子スポーツ選手の関係、学校の授業で行うサッカーにおけるハンドの意味、短距離走のタイムと性格との関連など、人をくった、実に非生産的なエッセイが並ぶ。要するに、徹底的に斜からスポーツを眺め、無責任かつ面白おかしくスポーツについて語った本である。けっこう毒舌だし、気晴らしや娯楽には良い本だと思う。