ボナ植木『書斎がいらないマジック整理術』

知る人ぞ知る二人組のコメディマジシャン「ナポレオンズ」の片割れがボナ植木である。まあボナ植木が「整理術」の本を書いたというだけで借りたようなものだ。ただ、内容は予想していた以上に興味深い。

部屋の数や広さが限られている一般的なサラリーマンにとって、書斎や大きな机は高嶺の花だ。子どものいる家庭はなおさらだろう。ボナ植木はマジシャンらしく「書斎とデスクを消失させる」と表現しているが、本書の試みは、そうした読者のために、書斎や大きなデスクのいらない生活をアシストすることにある。

本書の第一の要点は「全てのメモを書式にこだわらず単一のメモ帳に書き、その後パソコンに必要な情報をまとめて入力する」ということだ。システム手帳だの紙封筒だの京大式だのといった小賢しい工夫はほとんどない。次は「モノを検索しやすい状態にして棚に収納し、家全体を書斎と捉え直す」ということだ。これも細かい取り決めはしないようにしている。そして「マジック・トランク・デスク(MTD)を使う」というものだ。MTDとは、文房具と現在進行中の仕事の資料を収納できるトランク状のミニ書斎だ……が、どうにも説明しづらい。ちょっと貧乏くさいが、文具と仕事の資料と作業スペースが同時に確保できるのは、場所のない人には便利かなとも思う。

「まず何事も形から入り、形だけで終わる」俺には、こういったざっくばらんなメモ帳の使い方は性に合っている。マジシャンは学生やサラリーマンとは全く違う世界の人間だが、本書は一般人の身の丈に合った整理術だと思う。