ドゥーガル・ディクソン&ジョン・アダムス『フューチャー・イズ・ワイルド』

「脅威の進化を遂げた2億年後の生命世界」という副題がついているように、本書は未来の地球を描いた本である。

しかし、いわゆる「トンデモ本」や単なる夢物語とは一線を画している。本書で描かれる500万年後、1億年後、2億年後の地球の様相は、そのどれもが、地球科学・地磁気学・気候学・生物学・生態学・バイオメカニクス・生理学といった数多くの第一線の科学者の協力と詳細なデータを元にして計算・シミュレートされた、鮮やかで賑やかな「未来」だ。もちろん想像を超えた遠未来の地球を描こうというのだから、ある程度の推測は避けられないとは思う。しかし決して荒唐無稽なものではないということは、やはり述べておきたい。

本書の中には様々な生物が描かれている。現代から500万年後の草原で群れる地球最後の霊長類、1億年後の未来にクモの家畜として生き残った最後の哺乳類、2億年後の北部森林地で暮らす陸生の巨大イカ、氷河期の最盛期である500万年後に生きるクジラ並の巨大ペンギン、温室化・酸素濃度の上昇によって巨大化した1億年後の昆虫、2億年後の唯一の大陸「第二パンゲア」の内陸部の砂漠で生きる跳躍するカタツムリ――どれもこれも楽しくてワクワクする。前段ではデータや科学的見地を元にして本書が描かれたと書いたが、細かいことを考えずとも純粋に楽しめる。ちなみに俺の一番のオススメは1億年後のクラゲなのだが、ぜひ実際に読んでほしいので、あえて詳しくは書くまい。とにかく必読。