重松清『幼な子われらに生まれ』

幼な子われらに生まれ (幻冬舎文庫)

幼な子われらに生まれ (幻冬舎文庫)

いわゆる「バツイチ」同士で再婚した主人公は、現在の妻、そして妻の連れ子の2人の娘とも「家庭」を築く努力をしてきた。しかし現在の妻の妊娠を機に長女との仲が修復しがたいほど悪化していき、「ほんとうのパパ」に会いたいと言い出すようになる。主人公は、前妻の娘と長女を比べ、今の家族に息苦しさを感じ――といったアウトライン。今回は文庫の裏表紙の言葉をかなり使ってアウトラインをまとめた。毎回のように思うが、小説の内容をまとめるのは難しいねえ。あまり内容を明かすのも良くないし。
再婚同士の家族の葛藤、離婚した娘への未練、それらは物語のモチーフとしてはありふれており、小説だけでなく、漫画やトレンディドラマでも大量に生産され、そして消費されている。その意味では正直あまり読む前は期待していなかったが、主人公や長女の葛藤の描写がリアルに感じられ、一気に読み切った。最後、思わず泣きそうになった。単純なハッピーエンドや稚拙な絶望感に逃げないところが良い。重松清の中ではそれほど有名な小説ではないと思うけれど、非常に感動したし、改めて「家族」について考えさせられた。良い本!