- 作者: 荒俣宏,田島昭宇
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1995/06
- メディア: 文庫
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本巻での魔人・加藤保憲は、『帝都物語 第弐巻』で関東の地霊・平将門の抵抗に会い、辰宮洋一郎の妻にして巫女・辰宮恵子をかどわかして満州に連れ去り、馬賊の親玉としてソ連国境を荒らし回っている。「帝都」東京に対する加藤保憲の憎悪を辰宮恵子が全力で抑え込んでいる期間とも言えるし、次なる帝都破壊のための英気を養っている期間とも言える。
本巻で個人的に特に面白かったエピソードは2つ。1つは、病床の寺田寅彦を幸田露伴が見舞うシーンである。加藤保憲という宿敵に立ち向かった2人が、病気と死を前に、改めて交流を深める――というあたりが、史実をなぞっている点も含めて、深い。もう1つ、荒俣宏が最も気に入っている、魔人に翻弄され続けた娘・辰宮雪子の悲恋のエピソードも必見であろう。これは俺も気に入っているエピソードだ。
本巻は、魔人・加藤保憲の暴虐はないものの、シリーズ全体の深みを醸し出すエピソードがたくさん含まれている。やはり猛烈に必読と言えるだろう。