荒俣宏『帝都物語 第四番』

帝都物語 第四番 (4) (角川文庫)

帝都物語 第四番 (4) (角川文庫)

350万部も売り上げた、言わずと知れた大ベストセラーシリーズの第4巻。以前は全12巻だったようだが、阪神大震災の起こった95年、全6巻の新装合本版として刊行されている。本巻は『帝都物語6 不死鳥篇』と『帝都物語12 大東亜篇』を合本再編集した新装版であり、戦争終結間近の旧満州の首都新京と戦後日本を舞台としている。
本巻の最大のトピックスは、魔人・加藤保憲の動きである。『帝都物語 第参番』では動きの少なかった加藤保憲だが、第二次世界大戦でも帝都を破壊し尽くせなかったと見るや、中国の秘術により不老不死の屍解仙(仙人)となる。60歳を超える古い肉体を捨て、強く新しい肉体を手に入れたのである! その描写たるや、まさに戦慄。そして東京に再上陸した加藤保憲は、徐々に帝都破壊のために暗躍を始める――といった感じ。次巻では大暴れの予感。
また終戦間近の新京で魔と対決した老風水死・黒田茂丸の活躍ぶりも必読。ちなみに黒田茂丸は、俺の好きな『シム・フースイ』シリーズの主人公・黒田龍人の祖父である。黒田龍人とは違って最後まで人格者だった。
深い深い呪われし業を背負った兄妹、辰宮洋一郎と辰宮由佳理のエピソードの終着点にも注目しつつ、本巻も猛烈に必読。