インキュベ日記

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『WXIII PATLABOR THE MOVIE3』

WXIII 機動警察パトレイバー [DVD]

WXIII 機動警察パトレイバー [DVD]

ゆうきまさみ出渕裕高田明美伊藤和典押井守によるプロジェクトグループ「ヘッドギア」が中心となって、80年代から90年代前半にかけて確信犯的に展開した巨大メディアミックスプロジェクト、機動警察パトレイバー。1993年公開の『機動警察パトレイバー2 the Movie』をもって終了したように思っていたが、約10年後の2002年に劇場版第3作である本作が劇場公開された。
ゆうきまさみの漫画版のエピソード「廃棄物13号」を原案に、出渕裕がスーパーバイザー、「ガンダム0080」の実力派・高山文彦が総監督にあたり、ゆうきまさみの師匠にあたる鬼才マンガ家とり・みきが脚本を執筆――とのこと。押井守が脚本や監督ではない模様で、どのシリーズとも異なるウェットな印象。また本作の時間軸は、劇場版第2作の後ではない。まあいずれにせよ、特車二課の面々やパトレイバーは脇どころか小道具程度に追いやられ、事件を追いかける刑事が本作の主人公となっている。どうやら今までのパトレイバーシリーズとは完全に切り離された、独立した世界観を持った作品だと考えた方が良さそうである。
ストーリーは、怪物モノやSFの枠組みを借りてはいるが、基本的にヒューマンドラマ。主人公の刑事は、東京湾沿岸で続発するレイバー襲撃の捜査に当たるが、その「動機」や「共通性」が見抜けず、捜査は難航する。しかし操作を続ける中、どうやら「怪物」がこの事件に関わっているらしいと気づく――といったプロローグ。重い内容だが、2人の刑事&物語の鍵を握る女性大学講師の葛藤や緊張関係が丁寧に追いかけられ、俺は面白いと思った。
しかし「パトレイバー」としてアリかと問われると話は別で、(ファンの意見は分かれるだろうが)俺はナシだと思う。パトレイバーを通してみたファンにとっての面白さは、漫画版の「廃棄物13号」シリーズを原案にしたという事実ぐらいだろう。キャラクターに依存して成り立つアニメーションに対するアンチテーゼなのかなとも一瞬思ったが(俺はアニメに詳しくないので本当のところはわかりません)、それならば「パトレイバー」という枠組みで作るのは小狡い。『機動警察パトレイバー』のファンの多くは、まさしくキャラクターやパトレイバーの魅力にハマった人たちなのだから。
いっそのこと、ゆうきまさみの「廃棄物13号」を原案にしつつ、「パトレイバー」も「第二小隊」も全て取っ払って物語を再構築した方が、ファンの反発や混乱が生じなくて良かったのではないかと思う。実際それは可能だろう。パトレイバーや第二小隊は5分くらいしか出てこないし、登場シーンも自衛隊で事足りる。主人公の刑事が後藤喜一隊長と知り合いだったという設定も、本作と「パトレイバー」を強引に結びつけるギミックに過ぎない。さらには昭和70年代という思想色の強いギミックも空々しさに拍車をかける。どうしても「パトレイバーが」必要なのであれば(俺は必要ないと思うが)、最悪「パトレイバー」という世界観は踏襲しつつ、時代をグッと後にズラすか場所を変え、特車二課第二小隊の全く出てこない設定にする必要があったのではないだろうか。
結論としては、一作品としては面白いが、パトレイバーの枠組みを借用するスタンスには強い疑問を感じる、ということである。