『12人の優しい日本人』

12人の優しい日本人 [DVD]

12人の優しい日本人 [DVD]

陪審員制度のあるパラレルワールドな日本を舞台とした法廷劇。脚本は三谷幸喜。再々々演までされている舞台らしいが、1991年に映画化もされており、その映画版が本作。
幼い子どもを抱えて苦労している若くて綺麗な女性が、逃げても逃げても付きまとっては酒を飲んで暴れるダメダメなヒモ男(泥酔中)に復縁を迫られ、口論になった結果、ヒモ男が女性に突き飛ばされ、トラックに轢かれて死んでしまうという。この殺人事件について、12人の陪審員が1つの部屋に集められ、議論することになる。本作の陪審員制度では(票決不一致を除き)12人全員の意見の一致を得るまで議論が続くのだが、苦労している上に若くて綺麗な女性を庇いたいという同情心から、当初は12人全員が「無罪」に投票し、議論することもなく終わりかける。しかし一度は無罪に投票した陪審員2号が「話し合いましょう!」を口癖に強硬なまでに有罪を主張し始め、議論は二転三転して収束不可能になる――というアウトラインである。
現実の日本でも陪審員制度はそう遠くない未来に開始されるが、本作と似たような問題というのはきっと起こると思う。当時は「ありえねー!」と笑って観ていれば良かったのだろうが、2006年現在ではそうとばかりも笑っていられない。、たまたま選ばれた人間が理屈の全く通じない人間である可能性や、ロジックではなく感情で人が人を裁くワイドショーのような判決が巻き起こる可能性は、まさに「今そこにある危機」なのだと言える。意外にも本作は薄ら寒いホラーなのである。
ところで陪審員2号を演じる相島一之は、この頃から良いねえ。今も昔も基本的には無名な役者なのだと思うが、さすが舞台で鍛え上げているだけあって、めちゃくちゃ良い。あと豊川悦治、当たり前だが若いなあ。びっくり。