『巌窟王』9巻

巌窟王 第9巻 [DVD]

巌窟王 第9巻 [DVD]

アレクサンドル・デュマの小説『モンテ・クリスト伯』を原作とする深夜アニメ。元々は『モンテ・クリスト伯』をモチーフとするSF小説『虎よ、虎よ』をアニメ化しようとしていたそうだが、著作権の関係で実現せず、『モンテ・クリスト伯』をアニメ化したらしい。そのためか、細部まで原作に忠実にアニメ化しているわけではない。19世紀のパリではなく幻想的な未来のパリが舞台である点、復讐する側ではなく復讐される側の子どもたちの視点から話を構成している点など、原作を活かしつつも(かなり)大胆な構成の組み換えが行われている。原作とはまた異なった彩りが本作にはあり、原作を読んだ者も読んでいない者も楽しめると思われる。
DVD第9巻には以下のエピソードを収録している。

第十七幕「告白」
第十八幕「決闘」

第十七幕でついに伯爵の真意をアルベールが知ってしまう。焦らして焦らして、アルベールが真実を知る瞬間は、本作全体を通したハイライトの1つであろう。視聴者はとっくの昔にわかっていて、人の良いアルベールだけが伯爵に心酔しきっているため、視聴者は「まだ気づかないのかよ!」という感じでもあった。しかし、それでもなお、このシーンは痛々しい。裏切られたアルベールは伯爵に決闘を申し込むのだが、それもまた、伯爵の手の中……というのは、どうにも哀しいね。そして物語の凄さ、伯爵の凄さに、猛烈に痺れる。これは面白い!
しかし、親友のために命を捨てる覚悟で伯爵と対峙するフランツは、どうやらアルベールに対して特別な感情を抱いていたようだ。いくつか伏線らしき言動があったので、親友とも家族とも違った、同性愛的な感情を抱いていたのかな、という感じを持ったが、真相は(単に俺が見逃していたのかもしれないが)よくわからない。原作でもそうだったのだろうか。原作を読破していたら、そのあたりの楽しみもあるだろう。