細野不二彦『ギャラリーフェイク』2巻

細野不二彦による傑作美術漫画。主人公の藤田玲司(フジタ)は、かつてはニューヨークのメトロポリタン美術館 (MET) の敏腕キュレーターで、卓越した修復技術や豊富な知識から「プロフェッサー(教授)」と称えられるほどの尊敬を集めていたが、元同僚の陰謀によりメトロポリタンを追われ、帰国。現在は、表向きは贋作やレプリカといったニセモノを専門に扱う「ギャラリーフェイク」という画廊(アート・ギャラリー)の経営者だが、裏ではブラックマーケットに通じ、盗品や美術館の横流し品を法外な値で売る悪徳画商という噂であり、その噂は完全に真実である。しかし一方で、メトロポリタン時代から一貫して美に対する真摯な思いを持ち続け、美の奉仕者としての面も持つ――という設定。Q首長国クウェートがモデルの模様)の王族の娘であるヒロインのサラ・ハリファや「美術界のジャンヌ・ダルク」と呼ばれる三田村館長など、脇役も非常に魅力的である。
この巻には以下のエピソードが収録されている。

ART.1 愛国者のトリック
ART.2 監獄のミケランジェロ
ART.3 ターバンの女
ART.4 罠
ART.5 大いなる遺産
ART.6 混沌(カオス)の国にて
ART.7 火難アリ
ART.8 ジョコンダの末裔(まつえい)(前編)
     ジョコンダの末裔(まつえい)(中編)
     ジョコンダの末裔(まつえい)(後編)

個人的には「監獄のミケランジェロ」と「ターバンの女」のエピソードが特に好きだが、本作全体としては「ジョコンダの末裔」が外せない。基本的に『ギャラリーフェイク』は一話完結モノなのだが、このエピソードを通して、この世のどこかにある「もう一枚のモナ・リザ」を探し出す――という大きな物語がセットされるのである。
なお、フジタの娘を自称するエリザベータ(リザ)や、フジタに贋作商売やブラックマーケットのイロハを教えた菱沼(しかし、その後は袂を分かった)といった主要キャラは、この巻で初登場する。