- 作者: 細野不二彦
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1998/08
- メディア: コミック
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この巻には以下のエピソードが収録されている。
ART.1 カンボジア クエスト(前編)
カンボジア クエスト(後編)
ART.2 連立不当方程式
ART.3 左官魂
ART.4 聖なる宝石
ART.5 メトロポリタンの一夜
ART.6 化石をめぐる人々
ART.7 修復家の館
ART.8 "アンティーク・オルゴールで子守歌を"
テレビアニメの最終話にもなった「メトロポリタンの一夜」は、かなりの名作であろう。閉館後の美術館はアメリカ上流階級の社交場として機能する。海外の美術館は運営資金の大部分を寄付に頼っており、今も昔も金持ちのパトロンがアートには欠かせない。そこで資産家階級との人脈を作り、引き付けるため、頻繁にパーティー(夜会)を開催するのである。集まった資産家たちは華やかなパーティーを楽しむのはもちろんのこと、時には美術館に寄付をすることで名士としての評判を確固たるものにする、という構図である。
パーティーの開かれた日に、たまたま野暮用で夜のメトロポリタン美術館を訪れたフジタは、久々にメトロポリタンの名画をゆっくり鑑賞することにする。フジタが静かに名画を鑑賞していたところ、(パーティーや高すぎる美術品に嫌気が差して)帰ろうとして迷った一人の実直な資産家と出会う。不夜城たるメトロポリタンでは膨大な人々が働いていることを知ったその資産家は、美術品ではなく、メトロポリタンで働く人々や建物を案内してくれるようフジタに頼む――というアウトラインである。信念を持って働く人々の姿は確かに胸を打つ。最高。
翡翠(フェイツイ)の過去が明らかになる「聖なる宝石」や、ゴッホの筆のタッチを数式で明らかにした男の登場する「連立不当方程式」、表題作「カンボジア クエスト」など、傑作揃いの『ギャラリーフェイク』の中でも面白いエピソードが多い巻ではないだろうか。