細野不二彦『ギャラリーフェイク』32巻

ギャラリーフェイク (32)

ギャラリーフェイク (32)

細野不二彦による傑作美術漫画。主人公の藤田玲司(フジタ)は、かつてはニューヨークのメトロポリタン美術館 (MET) の敏腕キュレーターで、卓越した修復技術や豊富な知識から「プロフェッサー(教授)」と称えられるほどの尊敬を集めていたが、元同僚の陰謀によりメトロポリタンを追われ、帰国。現在は、表向きは贋作やレプリカといったニセモノを専門に扱う「ギャラリーフェイク」という画廊(アート・ギャラリー)の経営者だが、裏ではブラックマーケットに通じ、盗品や美術館の横流し品を法外な値で売る悪徳画商という噂であり、その噂は完全に真実である。しかし一方で、メトロポリタン時代から一貫して美に対する真摯な思いを持ち続け、美の奉仕者としての面も持つ――という設定。Q首長国クウェートがモデルの模様)の王族の娘であるヒロインのサラ・ハリファや「美術界のジャンヌ・ダルク」と呼ばれる三田村館長など、脇役も非常に魅力的である。
最終巻となる32巻には以下のエピソードが収録されている。

ART.1 有罪か無罪か?
ART.2 生キタ、カイタ
ART.3 終着駅
ART.4 銀の匙
ART.5 フジタ窮迫す!
ART.6 呪われた左腕
ART.7 “かませ犬
ART.8 ベールの向こうのサラ
ART.9 虎口
ART.10 駱駝の王国
ART.11 宝の鍵
ART.12 香水と三人の賢人(マギ)
ART.13 最後の審判

「フジタ窮迫す!」から最終話の表題作「最後の審判」までは、フジタがずっと追い求めてきた「幻のモナ・リザ」をめぐるエピソード。難しいモチーフだが、お茶を濁さず、この問題に一応の蹴りをつけて終わらせたのは素晴らしい。もう終わりだろうが、一応続編も作れる幕引きになっている。
全32巻と結構な長編になったが、クオリティは最終巻まで変わらず高値安定で、誰しも一度は読む価値のある作品であろう。