- 作者: C.D.B.ブライアン,Courtlandt Dixon Barnes Bryan,村上春樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/09
- メディア: 新書
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ネタ元(?)である『グレート・ギャツビー』では、ジェイ・ギャツビーはデイジーとの恋を実らせることはできなかった。しかし本書のメインキャラクターであるデスリフは、語り手であるアルフレッドが大反対したにもかかわらず、見事にアリスとの恋愛を成就し、結婚することになる。ただ、その後、語り手はアルフレッドからデスリフに変わり、現実的で皮肉な――つまり『グレート・ギャツビー』とは違う意味で哀しい物語が綴られる。思いのままを貫いたはずのアルフレッドの救いのなさと言ったら、これはもう一読の価値アリである。仮にストーリーだけ考えてみても、大胆なアレンジを加えてトレンディードラマや映画にしたら、コメディータッチでもシリアスタッチでも面白くなるかもな〜(もちろん本書の魅力の核は喪われるが)。まあセックスレスがモチーフのひとつなので、現代的な面白味もあるし。
てっきり本書を「『グレート・ギャツビー』のパロディー」「村上春樹の翻訳」という2点だけしか見所のない本だと思っていたが、とんでもない! 本家の文学的水準には適わないかもしれないが、本書も十分な面白さを持っている。