大内伸哉『雇用社会の25の疑問 労働法再入門』

雇用社会の25の疑問―労働法再入門―

雇用社会の25の疑問―労働法再入門―

労働法の学者による、労働法の入門書。学者らしく判例やら用語解説やらがふんだんに織り込まれているが、判例や用語解説を読み飛ばせば、全く労働法に馴染みのない方でも面白く読める構成となっている。

第1話 どうして、社員は就業規則に従わなければならないのか
第2話 退職金は、退職後の生活保障としてあてにできるものか
第3話 社員は、会社の転勤命令に、どこまで従わなければならないのか
第4話 女性社員は、夜にキャバクラでアルバイトをしてよいか
第5話 会社が違法な取引に手を染めていることを知ったとき、社員はどうすべきか
第6話 労働者には、どうしてストライキ権があるのか
第7話 女子アナは、裏方業務への異動命令に従わなければならないのか
第8話 会社は、美人だけを採用してはダメなのであろうか
第9話 会社は、試用期間において、本当に雇用を試すことができるか
第10話 会社は、どんな社員なら辞めさせることができるか
第11話 会社は、社外の労働組合とどこまで交渉しなければならないのか
第12話 会社は、社員の電子メールをチェックしてよいのであろうか
第13話 労働法は、誰に適用されるのか
第14話 労働組合の組織率は、どうして下がったのか
第15話 成果主義賃金は、公正な賃金システムであろうか
第16話 公務員には、ほんとうに身分保障があるのか
第17話 正社員とパートとの賃金格差は、あってはならないものか
第18話 定年制は、年齢による差別といえるであろうか
第19話 少子化は国の政策によって解決すべきことなのか
第20話 誰が「強い」労働者か
第21話 労働者が自己決定をすることは許されないのか
第22話 日本の労働者は、どうして過労死するほど働いてしまうのか
第23話 雇用における男女差別は、本当に法律で禁止すべきことなのであろうか
第24話 会社は誰のものなのか
第25話 ニートは、何が問題なのか

女性社員のキャバクラでの副業はOKかを考え、女子アナの労働問題について考え、美人だけを採用すれば違法になるかを考え、事実無根なのにセクハラを告発されそうな上司が該当の部下の私用メールを監視するのはOKかを考え、性差による雇用の差は本当に差別なのかを考える――どうも素朴な「疑問」とやらが(良い意味で)偏っていると思うのは俺だけだろうか。思わずニヤリとしてしまう面白さがある。もちろん労働法に沿って考えているので、茶飲み話とは全く違うのだが、とはいえ教科書的な文章ではなく、著者の私見や法律的解釈がふんだんに盛り込まれている。こういった「真面目にポップな本」は貴重なので、ぜひみんなで読んだ方が良い。