- 作者: 西久保浩二,社会経済生産性本部生産性労働情報センター
- 出版社/メーカー: 社会経済生産性本部生産性労働情報センター
- 発売日: 2005/03
- メディア: 単行本
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ところで本書とは少し外れるが、著者繋がりで言えば、先日この人が書いたネットの記事も良かったな。備忘録的に書いておくと、福利厚生のメリットを「限定性」という視点で読み解いていたのだが、要はこういうことである。
まず現金給与払いだと、金を貰う側(社員)は金を自由に使えて嬉しい。しかし「たくさん欲しけりゃ成果を出せ(あるいは能力をつけろ)」以上のメッセージを込めることは難しい。しかし福利厚生として報酬を設定した場合、そこに企業のメッセージを込めることが容易になるのである。
例えば「資格取得のための講座受講補助」を福利厚生のメニューに加えたとする。社員は、LECやTACなどの講座を受ける限りにおいては「お得」だが、家族旅行に行きたいとか本を買いたいとかギターが欲しいとかフランス料理が食べたいとか新しい服を買いたいとか、そういう用途に対する出費に対しては無意味である。あくまでも資格取得のための講座受講に限られている。その意味で社員にとっては使い道が「限定」されており、不便である。しかし会社からの「仕事で忙しい中で自己啓発に励んでほしい」「そういう人を支援したい」というメッセージは明確に伝わるのである。
資格取得のための費用補助だけではない。福利厚生メニューの中に英会話スクールの費用補助を加えると「会社として英語力のある人材は重用する」というメッセージが社員に伝わるし、社内託児所の設置を設置したら「女性を貴重な戦力として捉えており、結婚・出産後も自社で長期的に働いてもらいたい」といったメッセージが社員に伝わる。会社の近くに住んだら住宅手当にプラスアルファの色をつけるという企業もあるが、これなどは「終電を気にせずバリバリ働け、ただし通勤に伴う疲労の軽減や時間の短縮は企業が責任を持つ」というメッセージになるだろう。
福利厚生の廃止・賃金化や、「色々と取り揃えたから自由に選んでください」的なカフェテリアプランは、しばらく前からトレンドとなっているし、それを別に肯定も否定もする気はない。ただ、福利厚生の良し悪しは別として、こうしたことはきっちりと認識して福利厚生施策を検討しなければならないな、と強く認識した次第。まさに本書の言う「戦略的福利厚生」ということだな。