岩下広文『生産性アップにつながる「50」の具体策』

人事コンサルタントが教える 生産性アップにつながる「50」の具体策

人事コンサルタントが教える 生産性アップにつながる「50」の具体策

第1章~第4章で、そもそも生産性向上が求められる背景や生産性の定義・日本企業の生産性が低い理由・生産性向上に向けたアプローチについて整理し、第5章で書名のとおり生産性向上施策が50ほど紹介され、第6章でまとめ、という構成である。

さて、元々は第5章が気になって購入したのだが、前半部分もよくまとめられていて参考になった。ただし、やや気になったのが、第3章で書かれていた「なぜ日本企業は生産性が低いのか? <4つの理由>」である。本書では4つの理由を以下のように整理している。

  1. 無駄なアウトプットが多い
  2. 低付加価値なアウトプットが多い
  3. 社員数が多い
  4. 労働時間数が長い

誤解してほしくないのだが、わたしは理由1~4それぞれは当然「ごもっとも」だと思うし、賛同する。わたしは「強すぎる解雇規制」が結局会社も従業員も不幸にしていると思っているが、著者もその点についてしっかりと触れている。だが、個人的には「そもそもアウトプットにかける時間・割合が少ない」というのが最も本質的な理由なのではないかと思う。無駄な会議、無駄な客先訪問、経費等の手続き、稟議書の持ち回り……これらはアウトプットには一切影響がない。「曖昧な役割定義」など、これによく似た指摘はあったのだが、従業員はそもそも、アウトプットを出すための検討や作業に、労働時間の何割を使えているだろうか。

具体的な50の施策については、大きく4つの領域で整理されている。

  • 人事制度関連の具体策(1-15)
  • 労働時間制度関連の具体策(16-30)
  • 物理的施策関連の具体策(31-40)
  • 研修・トレーニング関連の具体策(41-50)

正直に言って、人事制度や研修・トレーニングを少々手がけたところで生産性は向上しないだろう。労働時間制度関連と物理的施策関連は参考になる。