
- 作者: 野口悠紀雄
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2013/05/02
- メディア: Kindle版
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しかし著者の主張はそのいずれとも異なる。
著者が本書で述べたかったのは「現在の日本経済を構成する主要な要素は、戦時期に作られた」という仮説である。
終身雇用制・年功序列賃金・企業別労働組合の三種の神器に代表される日本型企業、護送船団方式による手厚い銀行保護に代表される間接金融中心の金融システム、直接税中心の税体系、中央集権的な財政制度や官僚制度、株主軽視(従業員重視)、下請制度の普及、土地制度、高い貯蓄率など、日本経済の特質と捉えられているものは本来日本には存在しなかったものだが、資源を軍需目的に集中させる必要性から、1938年の国家総動員法の施行などにより1940年前後の数年間で人為的に導入されたものである。そして農地改革や財閥解体といった戦後改革の一方で、行われなかった戦後改革もあり、これらの人為的な仕組み(戦時経済)は第二次世界大戦後も継続している。加えて、これら1940年体制(戦時体制)の基本的な理念として、生産者優先主義と競争否定、すなわち消費者軽視と強い規制がある。これら理念は現在に至るまで日本において大きな影響力を持っている……本書の言葉をわたしなりに変換・補足しながら説明すると、こんな感じのアウトラインであろうか。
細かい検証にはあまり興味がないので途中は読み飛ばしたが、上記の指摘は非常に面白かった。
確かに日本には、戦時経済が未だに残っているように見える。
この著者は「超」整理法でしか知らなかったが、こちらの本業の成果も非常に素晴らしい。