
- 作者: 新田ヒカル,星飛雄馬
- 出版社/メーカー: サンガ
- 発売日: 2009/12/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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特に後者については「本当にベーシック・インカムが支給されても皆が働くだろうか」という点の掘り下げが圧倒的に足りないと思う。デンマークでは皆がしっかり働いているから大丈夫です、なんて言われても読者は困る。そもそもデンマークは「分厚い福祉制度」ではあるけれども、「ベーシック・インカム」ではないと、著者自身が指摘済である。それなのに、似て非なる制度を運用する「日本とは全く事情の異なる国」の事例を理由に挙げられても、全くピンと来ない。
ただ俺はベーシック・インカム自体に否定的なのではなく、むしろ大きな期待をしている人間の一人である。ベーシック・インカムは、あくまでも「全員に」「ずっと」というのがミソで、俺は子ども手当のような対象者限定の手当や、定額給付金のような1回限りのクソッタレ手当には反対だ。これは単に有権者に媚びているだけとしか思えない。
ベーシック・インカムの利点として本書で語られているものの中には「うーむ」というものも多いが、本書の中で語られていた「セーフネットが充実しているから最低基準の引き下げや解雇が容易になる」というのは、日本社会にとって極めて重要な革命になるだろう。ヤル気や能力や適性の欠けている従業員の面倒を見るのは会社ではなく国であるべきだ――という主張には100%同意。解雇や雇用が楽になればなるほど、会社と働く人の双方が、自分たちにマッチした関係を求めて試行錯誤できる。実現は難しいと思うけれど、これが実現すると日本はもっと面白くなる可能性を秘めていると俺は思う。
あとベーシック・インカムがあると老後の心配がないから、無駄な貯金はなくなる、という点も、日本にとっては重要な革命になると思う。日本人は世界一貯蓄性向が高いとどこかで聞いたことがあるけれど、みんなもっと使った方が良いよ。