停戦から3年が経ったが、戦争の余波が未だに色濃く残る「帝国」を舞台に、戦災復興を旗印に組織された陸軍情報部第3課・通称「パンプキンシザーズ」の活躍を描く漫画。特殊部隊であまりにも多くの敵を殺してきたことで、罪悪感やPTSDに苦しんでいる主人公(ランデル・オーランド)と、戦争を経験していない貴族のお嬢様であるが、だからこそ「正論」と「信念」を強く掲げて進んでいけるヒロイン(アリス・L・マルヴィン)が、自分にないものをお互いに見出す「依存的な信頼関係」を構築していく、なかなか深い作品。
1巻
オープニング。序盤から、なかなか面白い。
2巻と3巻
主人公(ランデル・オーランド)が所属していた901ATT――通称・命を無視された兵隊(ゲシュペンスト・イェーガー)――とは異なる特殊部隊(908HTT)が登場。単眼の火葬兵(アルト・シュミート・イェーガー)という通称で呼ばれ、何と火炎放射器で人間を焼くという、漫画でもなかなか残酷な描写である。でも、このエピソードが一番好きだな俺は。戦争の異常性や非人間性がよく伝わってくる。
4巻
戦災復興と言いながら、結局「貴族を初めとした恵まれた特権階級」と「苦しい民衆」の間には、深〜い溝があるんだよ、というお話。身分社会というのは、こういうところがあるよなあ。
5巻
貴族と平民の「越えられない断絶」という物語構造が、いつの間にやら貴族と平民の決闘という形に収束してしまった。まあわかりやすいんだけどね。
6巻
メインは、戦争に取り憑かれ、戦争を「再現」ないし「模倣」しようとした軍隊たちのエピソード。まあ、これも一種の「戦災」だよなあ。このエピソードは面白い。
7巻
そう言えば、この漫画、ちょいちょい下ネタが挟まれてくるんよなあ。この巻でも挟まれております……それが良い!
8巻
潜入捜査官のウェットなエピソードと、「戦後」のどさくさに紛れてアレコレ町ぐるみでやらかしているハードなエピソードが、複雑に絡み合う。
9巻
けっこう長いエピソードだったが、それも大詰め。それにしても、血がドパドパ流れる流れる。この「帝国」の「戦後」のどす黒さは、なかなかのものである。
10巻
主人公(ランデル・オーランド)が、生まれ故郷である0番地区(通称オーランド)に凱旋。主人公は、売春婦の息子(父親はわからない)であり、実母も義父もなくしている。で、その後はストリート・チルドレンのグループで暮らした後、軍に入る際に生まれ故郷の地名を取ってランデル・オーランドと名乗った――ということらしい。色々と凝った設定を考えるもんだなあ。
11〜14巻
物語が複雑化していくにつれて、主人公(ランデル・オーランド)のPTSD的な残像が多発するようになる。物語の展開も、ますます目が離せない感じになっていて、続きが非常に楽しみな漫画。