現実と幻想の境目が融解したファンタジックな漫画を描く異能の漫画家・五十嵐大介による、おばけや異世界が出てこない普通の田舎暮らし漫画。
我ながら面白くなさそうな紹介文を書いたが、これは超絶面白い! 主人公は田舎生まれ・田舎育ちの20代と思しき女性。田舎の不便さや格好悪さが嫌で、都会に出て行ったが、居場所を感じられずに生まれ故郷に戻ってきたという設定。つまり田舎から都会に逃げた後、都会から田舎に逃げてきた訳である。そして彼女は、逃げ帰った先(つまり実家)で農業をしながら一人暮らしをして、自分を見つめ直すのである。
あえてステロタイプに表現すると「イマドキの若者」なのかもしれないが、ほとんどの人間は彼女を笑うことなどできないだろう。何も変わらない平穏な人生など夢物語だし、何からも逃げずに一生を全うできる人間もそう多くはない。地味なのだが、深い滋養のある物語だ。
加えて、田舎の風景の圧倒的な描写! この人の絵は本当に凄い。