インキュベ日記ベストセレクション2011

1年間の振り返りとして、2011年に読んだ本の中から特に印象深かったものを取り上げてみたい。

マイク・レズニック『キリンヤガ』

アフリカのキクユ族のために設立されたユートピア小惑星・キリンヤガで、「古き良き」キクユ族の生活を頑に、そして孤独に守ろうとするムンドゥムグ(祈祷師)の老人の戦いを描いたSF小説。めちゃくちゃ幻視的で、啓示的な小説。感動とは違う何かで心の奥底が共振する大傑作。

小川一水『天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ(上)』『天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ(下)』『天冥の標Ⅱ 救世群』『天冥の標Ⅲ アウレーリア一統』『天冥の標Ⅳ 機械じかけの子息たち』『天冥の標Ⅴ 羊と猿と百掬の銀河』

全10巻予定の、小川一水の最高傑作になるであろう小説。1〜3までは2010年に読んだのだが、最新の5巻で折り返し地点ということもあり、まとめて取り上げることに。第1巻のラストで「えっこれで終わり?」と見紛うクライマックス一歩手前という展開を見せるのだが、2巻は「現代」で、3巻以降は近未来と、1巻の遠未来に続くまでのストーリーが丁寧に綴られていく。






小川一水『青い星まで飛んでいけ』

バラエティ溢れる小川一水の短編集。この人はもう出す本が片っ端から面白すぎて凄い。

機本伸司『神様のパズル』『パズルの軌跡』『究極のドグマ』

天才女子高生・穂瑞沙羅華と凡庸な主人公の活躍を描くSFシリーズ。「宇宙を人工的に作ることは出来るか」「幸福を人工的に作ることは出来るか」「天才児を人工的に作ることは出来るか」といった、サイエンスと倫理の最先端のせめぎ合いの領域でSFを展開している。



夏目漱石『思い出す事など』

夏目漱石のエッセイ集。「文豪」というと、とかく堅苦しいイメージがあるが、この人は当代随一の大衆作家だということが、本書を読むとよくわかる。そして大衆作家のレベルが今と昔では全然違うということも。

伊藤要子『加温生活 「ヒートショックプロテイン」があなたを健康にする』

あたためることが健康に良いということを科学的に解明し、かつ一般の人にわかりやすく説明した本。この本はもっと広まって良いと思う。

城一夫+渡辺直樹『日本のファッション 明治・大正・昭和・平成』

明治開国から2000年代までの140年に渡る日本のファッションを、400点ものイラストを基に紹介・解説してくれている本。1920年代だの1960年代だのと聞くと古臭く感じてしまうが、これらは全て当時の文化シーンの最先端だったのである。リンク先に文章や画像で詳しく紹介しているが、とにかく大絶賛・大推薦の本。