
- 作者: 漆原次郎
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2011/12/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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難を言えば、本書を書いたのはジャーナリストであり、文章のプロではあってもビジネスのプロではないように思う。だからなのか、編集者がイマイチなのかは知らないが、本書の冒頭に載っている「『日産の会議』で使われる11のツール(道具)」に早くも違和感がある。まず、11のツールを簡単に紹介しておく。
- ポストイット(付箋)とホワイトボード:ファシリテーション関係の本で山ほど載っているツールであり、説明不要だが、発言者はあえて書かないのがポイント
- 課題定義書
- 集中討議進行表::会議進行のタイムラインを「進行」「目的・活動内容」「使用ツール」という観点で詳細に作成している。ここまで作り込んだ会議アジェンダは見たことがなく、最も「ほー」と思った(もうアジェンダの域を超えているね)。
- 系統図(三種の神器1):イシューツリーとも呼ばれる。
- 親和図(三種の神器2):一般にはKJ法とも呼ばれる。要はグルーピングで、ブレストの後は必須。
- ペイオフ・マトリクス(三種の神器3):実現性と実効性の二軸のマトリクスで解決策をプロットし、優先順位を検討するためのツール。
- 課題達成計画書
- デジカメ議事録:わざわざ議事録を書いて社内調整して……という無駄な時間をすっ飛ばすために、会議の中できちんと合意して、ホワイトボードにまとめ、それを撮影したデジタルデータを議事録の代わりにしましょうというもの。デジカメ議事録を導入した場合、目的や結論が曖昧な会議やプロセスがヘボい会議をしたら、後でゴミ写真がメールで送られてきて「What?」なことになるので、無駄な会議が減る&会議の質が上がると思う。
- プロセスマップ:横軸に作業、縦軸に担当を記載し、行程を図示。
- 漏れ分析:来店から購入まで、どの段階で「購入しない」選択をしたか、人数をカウントしてグラフ化。
- パーチェス・ファネル:客の「認知・理解・好意・購入意向・購入・再購入」のフェーズ毎に施策を検討するというもの。
本書を読めばわかるが、1〜8は確かに日産の会議全体で「必須」とも言えるツールである。一般的なツールが大半だが、噛み砕きが十分で、使い方がこなれているという印象を持った。ただし9〜11は日産の会議全体で「必須」と言えるものではなく、ある特定の会議で使われたツールに過ぎない。この1〜8と9〜11が「11のツール」として並列に紹介されているのは、整理がかなり甘いような気がする。そもそも「8のツール」と「11のツール」で読者に与えるインパクトの差がどれほどあるのかはわからないけれども、仮に俺が著者なら、いくら編集者に言われても両者を並列に書くことはしないだろう。