『トレーニング・デイ』

トレーニング デイ [Blu-ray]

トレーニング デイ [Blu-ray]

Amazonでリコメンドされて直感で購入。
癖のある先輩とそれに振り回される後輩という設定は、(まあ癖のある後輩という逆パターンも多いけど)映画のみならずテレビドラマなどでも頻繁に使われる、ぶっちゃけ「ベタ」な設定である。「ベタ」と書いて語弊があるなら「王道」と言い換えても良い。後輩・ミーツ・先輩で受けた衝撃の後、シリアスに向かうも良し、コメディーに向かうも良しで、色々な味付けが期待できるものの、まあ大体「コンビ」というものは最後には「わかり合う」ものだ、というのがフィクションにおける様式美と言って良いだろう。
ロス市警を舞台とした本作でも、麻薬捜査官の先輩(デンゼル・ワシントン)は犯罪者を捕まえないとか自分自身がイリーガルな行為に手を染めるとか、かなりエキセントリックなキャラクターで、駐禁を取り締まっていた部署から転属して初勤務となる後輩のイーサン・ホークは大いにショックを受ける。しかし先輩には悪を倒したいという想いはあるようだし、カリスマ的なオーラもあるし、まあ最後は先輩と後輩が「わかり合う」んじゃないかな、というのが購入段階での予想だった。

ここからややネタバレ有

で、ストーリーの中盤くらいまでは、「これはコメディーじゃないな」と思いつつも、やっぱり「綺麗事だけでは解決しない大人の世界を知った後輩」と「理想に燃える後輩のアツい気持ちを汲み取った先輩」が互いに歩み寄って大悪党をぶっ倒し、「わかり合う」んじゃないかなと思っていたのである。しかし先輩役のデンゼル・ワシントンの行為は最早ちょっとやそっとの神経じゃわかり合えないようなところまでどんどんエスカレートしていく。にもかかわらず、デンゼル・ワシントンは麻薬捜査官として初日(トレーニング・デイ)のイーサン・ホークに、歩み寄りを強要していく。その上、あろうことかデンゼル・ワシントンイーサン・ホークの「目」を気に入り、こいつは巨悪を共に倒すべく闘ってくれる同志だと感じ取り、自身の、そしてロス市警の、あるいは麻薬捜査官の汚い側面をさらにイーサン・ホークに見せつけていくのである。ひりつくほどに高まる緊張感!
その緊張感が極限まで高まった後どうなったか……つまり先輩と後輩がわかり合ったかどうかはここでは伏せるけれど、ラストシーンの後に俺が感じたことは、高潔さを選び取ることの難しさと、銃と麻薬にまみれたアメリカ社会を良くしていくことの難しさだ。非常に優れた映画で、色々な人が楽しめると思う。