丹野清志『誰も教えなかった“自分流写真”の方法』

誰も教えなかった“自分流写真

誰も教えなかった“自分流写真"の方法 (玄光社MOOK)

写真の技術・技法に興味が沸き、買ってみた。

本書は良い意味で、小手先のテクニックを開陳するものではない。といって古臭い精神論に固執しているわけでもない。この人は、撮りたいものを撮りたいように撮っていこうよという自然体の原則をまず認めた上でのアドバイスが多い。だからこの人のアドバイスには気負いがない。

 シャッターを切る瞬間に全神経を集中せよ、という“教え”は、私が写真を始めたころの時代にはよく言われたことです。
 ま、正論なのですが、そういうおカタイ古典的写真作法と比べたら、撮って、見て、撮り直しをするという繰り返しなど、実に軟弱で軽薄な撮り方です。
 私も古いタイプのカメラマンですから、初めてデジタルカメラを手にした時は、撮って、見て、消してを繰り返していくようじゃ緊張感はゆるくなるなあと思ったものでした。
 ところが、使い始めてすぐに、そんなことどうだっていいんじゃないのって気分になりました。撮った写真がすぐカメラに再生されるのですから、いいねぇ、面白いねぇ、とはしゃいでいたのでした。
 (略)再生、消去機能はデジタルカメラならではの機能なのですから、デジカメで撮るならフル活用すべきです。

……と、ここまでなら普通の気軽な写真エッセイだが、この話には続きがある。

 撮影後その場で消去するか、パソコンに取り込んでから消去するか。いずれにせよ自分の撮った写真を自分で消去するのですから、コンテストで言えば審査員です。セレクトする冷静な選択眼を持てば、消去作業というのは写真を読む目を豊かなものにすることにつながります。安易な機能といわれるものも、使いようで重くなるものです。

ところどころで凄く深いことを示唆してくれる、素晴らしい本。何度も折に触れて読み返したい。