大阪大学ショセキカプロジェクト『ドーナツを穴だけ残して食べる方法 穴からのぞく大学講義』

ドーナツを穴だけ残して食べる方法 越境する学問―穴からのぞく大学講義

まずは2ちゃんねるで話題になった「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」という同名のコピペを読んでほしい。なおコピペというのは「コピー・アンド・ペースト」の略だが、2ちゃんねるなどでは、頻繁にコピー・アンド・ペーストされる特定の文章それ自体を指し、テンプレ（テンプレート）とも呼ばれる。

実際派−普通に食べれば残ってるんじゃないの？（もっと考えろよ派）
　　　−ドーナツとは呼べないくらい細い縁を残せば？（それドーナツだよ派）
　　　−もっと時間をくれ（好きにしろよ派）
物理派−巨大なドーナツを光速で回転させることにより穴が空間的に閉じ（ｒｙ
　　　−箱に青酸カリの入ったビンと一緒に入れて（ｒｙ
化学派−穴に空気とは違う気体をつめれば？（それ残ってるのその気体じゃん派）
数学派−非ユークリッド幾何学的には可能（難しいよ派）
統計派−１００万回食べれば１回くらい穴だけ残ってるかもしれない（めんどくさいよ派）
地学派−半減期を調べれば穴の存在を証明できるかもしれない（本当かよ派）
合理派−ドーナッツ食べた後に穴の存在を証明すればいいんじゃね？（証明してみろよ派）
芸術派−私が存在しない穴を写実することでなんとかできないだろうか？（別問題だよ派）
言語派−問いかけが漠然としていて厳密な対策が不可能（ごめんなさいだよ派）
哲学派−穴は形而上的な存在の定義外にあり、超空間的な（ｒｙ
懐疑派−そもそもドーナッツの時点で怪しい・・・（意味が分からないよ派）
欧米派−ＨＡＨＡＨＡＨＡ！lol :D　（ｆａｃｋだよ派）
報道派−まずはドーナツに穴が空いているか世論調査すべき（捏造だよ派）
調理派−油分が多すぎるし形も下品（そんなことないよ派）
減量派−ﾜﾝﾓｱｾｯ
政府派−真に遺憾であり今後このような事態が起こらぬよう最大限の努力を（ｒｙ
外交派−食べてやってもいいけど代わりに援助基金を増設しろ（カードにされちゃうよ派）
精神疾患派−俺の心に穴が（ｒｙ
解答放棄派−そんなの不可能（思考停止だよ派）
　　　　　−ドーナッツってまずくね？（味覚障害だよ派）
　　　　　−アメリカの陰謀（中２病だよ派）
一休派−では穴だけ残しますからまずは穴の存在を証明してください（天才だよ派）
卑猥派−ドーナッツにも穴はあるんだよな・・・（レイプ反対！）

俺は2ちゃんねるそのものは読まないため、いわゆるまとめサイトから知ったのだが……どうだろう、なかなか知的に秀逸なネタではないだろうか？　こういうのは理解するのにセンスが必要だし、好みもある。しかし少なくとも俺はけっこう笑わせてもらったし、気に入っていた。

で、本書は、このコピペに出てくる「数学」や「哲学」といった学問領域を専門的に研究する阪大の教授たちが、このアメリカンジョークとしても使われる「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」や「ドーナツの穴」について大真面目に考えてみたという本である。インテリ層がこのネタにいわば「悪ノリ」した結晶こそが本書であると言って良い。

内容は正直「まあまあ」だし、教授の中には「問題のスリカエだよ派」も存在しているわけなんだけど、これを大真面目に企画して書籍化するというコンセプトの時点で、本書は「勝ち」である。「価値」がある、と言い換えても良い。もっとやれ。