こうの史代『日の鳥』

日の鳥

日の鳥

雄のにわとりが、震災によりはぐれてしまった自分の妻(つまり雌鶏)を探す……という設定で、主人公が「妻がいるのではないか?」と訪れた東北の様々な場所をボールペンでスケッチした絵日記風漫画。読んでみると情景はすっと頭に入ってくるが、コマ割りやセリフはなく、ストーリーと言えるほどのストーリーもほとんどない。
シンプルなボールペン絵だが、いやだからこそ伝わる、震災の凄まじさと受けたダメージの大きさ、そしてそこからの復興……良い作品を描いてくれたと私は思う。Amazonのレビューを読むと、人間の物語であるべきと評されていたが、どうだろうな。私にもその気持ちは正直あるが、同じコンセプトで人間を主人公にしてしまうと、人間にスポットが当たり過ぎて、「震災」や「復興」を素描して切り取るのは難しくなったかもしれない。