伊賀泰代『生産性』

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

本書は、よくある「生産性」論議に対してのカウンターとして極めて有効だ。ここでわたしが「よくある」と書いたのは、残業=悪、会議=悪、といった表面的で思考停止的な反応のことである。必要でない会議や残業は止めれば良く、必要な場合はきちんとやれば良い。それが論理的思考というものだろう。その点、本書の言っていることは(前作の『採用基準』と同様)非常に納得できるものである。

ただ言い方がなー。

二言目には「マッキンゼーでは」「外資系では」と来て、正直、鼻につく。そもそも著者がマッキンゼーを止めてから既に5年以上が経過しているのに、いつまで昔の看板で勝負するつもりなのだろう。これこそ「虎の威を借る狐」そのものでロジックを軽視した行為なのだが、実は著者の主張は、マッキンゼーという言葉を使わなくても、丁寧に書けば伝わるロジックばかりである。だからこそ余計に「惜しい」と感じる。