- 作者: 福原正大,徳岡晃一郎
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2016/01/07
- メディア: 単行本
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著者がAs-Isとして書いている「日本が人事の四つの呪縛」も、詳細は色々と言いたいことがあるのだが、概ね同意。
- 制度志向と個別人事の限界
- 組織のベクトルと個人の意思のバランス
- 暗黙知経営とダイバーシティの超克
- 短期的成果主義と本質追求の両立
で、以下が近未来のAI人事である。
- 人事戦略:グローバル基準の戦略立案
- 採用:求める人材像の基準化
- 評価:「評判」の重要性
- 異動・配置:職場やメンバーとのマッチング
- 戦略から合理的に落とし込まれた教育・キャリアパス
- 企業文化はビッグデータの宝庫
要するに、以下を言いたいようだ。
- 人事部が世界の最新情報を集めてシミュレートせよ
- 何となくの基準ではなく、成果を出せることが実証された、客観的・合理的な人材像に基づき人を採用せよ
- ビジネスSNSのような仕組みを作って評判を集め、多面的に評価をせよ
- 各種データに基づき、相性や要件を定量評価せよ
- 誰にどんな教育を受けてもらうか、AIにリコメンドしてもらえ
- 従業員調査などの企業文化情報をAIに分析してもらえ
まず、5と6は、極言するとTo-Beとその説明は単に「AIにやらせろ」と言っているだけだとわたしは理解したので、特段のコメントはしない。その上で、1〜4を読んで思ったのは、「これ別にAIやビッグデータ要らなくね?」ということだ。著者が問題意識として抱えている定性的・感覚的な企業人事の弊害と変革の必要性については同意するのだが、それならば定量的・合理的なデータ分析をすれば良いだけであって、その試みは近年「HRテクノロジー(HRテック)」「ピープル・アナリティクス」「科学的人事」等の名称で急激に注目を集めている。本書は「人工知能」と「ビッグデータ」をタイトルに挙げているが、前傾の潮流とほとんど変わらない。例えば、本当にビッグデータを云々するのであれば、優秀な人材というのはどのような意識・行動を取っているのかというのを、会社の枠を超えて、業界全体・社会全体で調査・分析していくことが必要ではないか。大して優秀でない人材ばかりが揃った数百人だの千数百人だのの社員を分析したところで、あっと驚くような知見が出てくることは少ないだろう(やらないよりはマシかもしれないが、イノベーションを生むほどの示唆は出ないだろう)。
なお、終盤の6章で、著者が立ち上げた育成・評価のツールというかサービスの紹介をしている。正直「結局それか」と思ったが、読み応えとしては6章が最もあるかな。リアルだし、熱がこもっているので。でもサービス紹介なので具体的なコメントは今回はしない。