本書は文字通り、著者の1965年から担ったルワンダ中央銀行総裁としての日々を描いたエッセイのようなものである。調べると初版は1972年、増補版が2009年に刊行されている。
著者は「世界で最も優秀な日本銀行に20年間勤めた」という類の発言をするなど強烈な自尊心があり、相手を名指しで批判するのは日常茶飯事、ルワンダを食い物にする貿易業者や銀行家なども馬鹿・無能などと舌鋒鋭くこき下ろしている。議論についても、発言を数ページに渡って書いて自分の論理の正当性、相手の非・正当性を詳細に書くなど、わたしは好きだが、ここまで我が強いと敵も増えそうだ。ただ著者は物凄く優秀だし、途上国の援助に対する強い理念を持っていて、ここはもう頭が下がる思いだ。
なお友人に聞いたのだが、短期間で次々とルワンダの改革を推し進める著者の姿が有能すぎるあまり「チート能力」の持ち主ではないかという話から、本書は近年「リアルなろう系金融ファンタジー」などと呼ばれているそうだ。本書でググった際に「なろう」という変換候補が出て若干の違和感を覚えたのだが、そういう経緯だったか。