
本気で作家になりたければ漱石に学べ!―小説テクニック特訓講座中級者編
- 作者: 渡部直己
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 1996/12
- メディア: 単行本
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実に幅広い文体や技法を採用する夏目漱石の小説を用いて、踏み込んだ議論をしている。
第一章では奥泉光と「なぜ漱石か」「漱石のどこがスゴいのか」といったことについて対談し、本編となる第二章では、漱石の文章を挙げながら、前回よりもグッと踏み込んだ、かなり高度な技術まで講義している。章ごとに「対象悪例」を挙げてボロカスにしているが、本書は講義自体がしっかりとしているので、あまり嫌味な感じはしない。もちろん、漱石と海千山千の現代小説家を比べること自体が既に嫌味だという説もあるが……。そして第三章では、第二章の内容を理解できたかどうかの「テスト」が載せられている。『それなりガイド』と違い、中級編とはいえ本書ではかなり突っ込んだ高度な議論がなされているため、正直「〈叙述/虚構〉の二重螺旋構造」などは一読しただけではほとんど意味を掴めなかった。だが、それだけに得るものも大きかったと思う。なるほど、わたしのような普通の読者が無意識に感化される部分には、このような意図的な技法が駆使されていたのか……と目からウロコ。再読に耐え得る本だと思う。オススメ。上級編の発売が非常に楽しみである。
……ということだったが、検索してみたら、『新それなりガイド』は『それなりガイド』が難しいという声に応えて易しくして出したから、『新それなりガイド』が初級編で、『旧それなりガイド』を上級編として使えとか著者が言っているとのこと。『新それなりガイド』の記憶が定かじゃないのだが、そもそも『それなりガイド』を初級編として本書を中級編としているのに、混線しまくって意味不明なことになる。もう上級編を出す気はないんだろうな。
追記
あれ、中上級者編 増補決定版として改訂版が出ている。誤摩化さず上級者編を出せよ……。

本気で作家になりたければ漱石に学べ!: 小説テクニック特訓講座中上級者編 増補決定版
- 作者: 渡部直己
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2015/12/18
- メディア: 単行本
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